うつ病・PTSDと鍼灸治療の効果
近年はうつ病・不安障害といった精神疾患は比較的理解されるようになってはいますが、鍼灸師のような医療従事者であっても残念ながら精神疾患に対する偏見・誤解を感じることがしばしばあり、つらい思いをされた方もいらっしゃるかもしれません。(理解があり、鍼灸を役立てようと学ぶ鍼灸師も多くいます)当院ではできる限り正確な情報に基づく理解をこころがけ、患者様が安心して鍼灸院に来られるように努めています。
目次
鍼灸に期待できること
・睡眠の改善
(例:寝付けない・夜中に目が覚める・熟睡感がない)
・うつ病に伴う身体症状の改善
(例:肩こり・頭痛や頭重・食欲不振・身体の痛み・だるさ・動悸・呼吸がしにくいなど)
・不安感・緊張感の軽減
個人差があります。
こんな方に向いています
・軽度、中等度のうつ病
・軽度の不安障害
・薬をあまり使えない方、使いたくない方
・薬で十分な効果が出ない場合の補助として
うつ病の鍼灸治療
痛みを感じやすくなっている方もいるので、最初は細くて軽い刺激からスタートし、場合によっては刺さない鍼での治療も行います。
うつ病の方では、特定の部位で脳血流が減少していることが多いのですが、頭や手足の適切なツボに鍼をすることで脳血流が増え、正常な状態に近づくことがMRIを使った研究でわかっています。
鍼灸施術によって、セロトニン、ドーパミン、オキシトシン、エンドルフィンといったホルモンが分泌されることがわかっており、リラックス効果・抑うつ感の改善につながります。精神症状だけでなく、身体症状の軽減も期待できます。
うつ病における鍼灸では、週1回で3か月間鍼灸を継続することで、ゆっくりと効果がでる傾向にあります。1)
PTSDと鍼灸治療
治療方針は前述のうつ病の鍼灸治療に準じています。アメリカ米軍の軍人のPTSD治療でも鍼灸治療や、耳に行う鍼が行われています。2)
備考
PTSD・うつ病などの背景には、長年にわたって繰り返されたトラウマ体験などが関与していることも多く、その場合は、心療内科やカウンセリングといった心理療法と併用することが望ましいです。
また、とくに軽症のうつ病では、体の症状が目立ち、こころの症状がわかりにくい場合があります。身体の症状が病院の検査で問題ないとされ、なかなか治らない場合は心療内科や精神科に相談することを検討するのも大切です。
当院での鍼灸治療が難しいケース
以下のような場合は、まず医療機関での治療を優先していただくことをお願いしており、申し訳ありませんが施術をお受けできないケースもあります。
・重度のうつ病、重度のPTSDなど、希死念慮が強い場合や自傷行為がコントロールできない場合
・施術への協力が難しく施術中の安全確保が困難な場合
・統合失調症の不安定な時期や重度の摂食障害といった病院での医療介入を優先すべき場合
参考文献
- Matsuura Y, Hongo S, Taniguchi H, Yasuno F, Sakai T. Effect of acupuncture on physical symptoms and quality of life in treatment-resistant major depressive disorder and bipolar disorder: a single-arm longitudinal study. J Acupunct Meridian Stud. 2022 Dec 31;15(6):336-346.
- Hollifield M, Hsiao A-F, Smith T, Calloway T, Jovanovic T, Smith B, Carrick K, Norrholm SD, Munoz A, Alpert R, Caicedo B, Frousakis N, Cocozza K. Acupuncture for combat-related posttraumatic stress disorder: a randomized clinical trial. JAMA Psychiatry. 2024 Jun 1;81(6):545-554.