□慢性疲労に鍼灸がなぜ効くのか?疲労の正体と対策
日本で働く人の約6割が「疲れている」と感じており、そのうち4割は半年以上続く慢性疲労の状態にあるとされています。疲労は多くの人にとって身近で、深刻な悩みのひとつです。
目次
疲労は体からのサイン
疲労を感じるのは辛さ・不快感を伴いますが、休みをとってほしいという身体からの大事なサインです。疲労は、「飽きた」「疲れた」「眠い」といった感覚として現れます。実は、最初に現れるのが「飽きた」という感覚で、これは脳の疲れのサインです。その後に「疲れた」、そして「眠い」という感覚へと進んでいきます。つまり、「飽きた」と感じた段階で小休憩を入れるのが、疲労をためないコツです。ただし、やる気や達成感によって分泌されるエンドルフィンやドーパミンによって、疲労感が麻痺してしまい、本当は疲労があるのに気づかないケースもあり、気づいた時には疲労が悪化しているため注意が必要です。
脳疲労の症状
疲労が蓄積すると生じるものに、記憶力の低下・ぼーっとする・朝起きられない・イライラする・楽しめない・眼が乾くなどがあります。放置すると、自律神経の不調からくる症状(例えば頭痛・吐き気・めまい・下痢便秘など)につながります。
疲労の正体
疲労の本質は、自律神経に深く関わっている脳の視床下部・前帯状回の細胞の酸化です。自律神経は休みなく働いており、酷使されるほど酸素を消費しその過程で活性酸素ができ酸化(さび)につながります。特に現代では、多くのストレス・スマホ等で夜間でも明るい光を浴びること・情報過多などにより自律神経が酷使されています。
酸化により細胞や細胞小器官が傷つくと、免疫細胞が傷を感知して炎症性サイトカイン(体内で炎症を引き起こす物質)を分泌し、それが疲労感につながっています。回復のためには、活性酸素の発生を減らすこと、抗酸化力を高めること、また、傷を修復するためのエネルギーを確保すること(つまり心身の過労を控え休息をとること)が必要です。これは精神的な疲労でも肉体的な疲労でも共通しています。
疲労の改善のために
生活環境や事情によって難しいことが多いかもしれませんが、疲労の本質を踏まえたうえで改善につながることを紹介します。
・睡眠 眠ることによって自律神経が休まります。個人差があるとは思いますが一般的には6時間が必要最低限で、プラス1,2時間眠れると酸化の回復に効果的です。
・イミダペプチドの摂取 イミダペプチドは、抗酸化や疲労回復に効果があると言われ、1日100gの鶏むね肉を摂取すると体内に発生した活性酸素を除去し、日常生活の疲れを防止することができるとされています(2)サプリメントもあります。
・不足すると疲れやすくなる栄養素の摂取
貧血でも疲れやすくなるため鉄分が十分に摂取できているかや、糖質や脂質をエネルギーに変えるビタミンB群が十分にとれているか、を振り返ってみましょう。
疲労と鍼灸
鍼灸治療によって、酸化ストレスが軽減し抗酸化力が向上する、脳血流が増加し脳機能が改善する、自律神経によい影響がある、疲労を軽減させるカルニチンという物質の代謝に影響することが知られています。慢性疲労症候群の方や疾患を持たないが半年以上疲労を感じている方を対象とした複数の研究から、鍼灸は疲労に効果があるという論文がでてきています。
鍼灸を受けた方からは、「身体の緊張がほぐれる」「ぐっすり眠れる」「身体が軽くなる」「頭や目がすっきりする」といった感想が聞かれます。疲れがやわらぎ、しっかり休める状態に整えてくれる印象です。
またコロナ後遺症にも鍼灸は活用されています。

疲労の背後にある疾患
疲労の陰には、病気が隠れていることもあるので、長期間続く疲労の場合は病院の受診も検討してみてください。疲労が生じうる疾患でよくあるものは睡眠時無呼吸症候群・うつ病・睡眠障害・貧血・脱水・甲状腺の異常などがあります。
ご覧いただきありがとうございました。
参考にしたもの:
(1)第59回現代医療鍼灸臨床研究会の講演
(2) https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001098.html(2025/5/26に参照)
(3)鍼灸療法技術ガイドII, p. 438-444, 疲労, 山崎翼